家を売る際、売買契約が締結すれば、いよいよ残りは物件の「引き渡し」を残すのみです。
引き渡しまでの期間は、一般的に、売買契約を締結した日から2~3ヶ月後になることが多いようです。
ただ、売買契約を締結してから引き渡しまでの期間に、やるべきことがいくつかあり、これらを怠ると最悪の場合、契約の解除に繋がりかねません。
また、消費税の増税に伴い、仲介手数料などの費用が増えることも考えられます。
そこで今回は、家の引き渡しまでの期間や延期した時のペナルティ、引き渡し当日の流れ、増税に伴う引き渡しのタイミングなどを徹底解説していきます。
売買契約締結日から2~3ヶ月で引き渡しをすることが多い理由
先ほど、売買契約締結から引き渡しまでに2~3ヶ月かかることが多いと書きましたが、そのくらいの期間になることが多い理由を解説します。
引き渡し時期には住宅ローンが影響
家を購入する人は、住宅ローンを組むことが多いですが、その審査や手続きにかかる時間が家の引き渡し期間に影響しています。
住宅ローンを組む流れは、次の通りです。
- 物件の購入申し込みをする
- 住宅ローンの仮審査をして、審査に通る
- 物件の売買契約を結ぶ
- 住宅ローンの本審査に通り、住宅ローンの契約を結ぶ
ご覧のとおり、買主は売買契約後に住宅ローンの本審査や手続きを行います。
これには、2~3週間程度かかり、その後、売主が引越しの段取りを行い、目処を立ててから、決済・引き渡しとなります。
これら全ての工程にかかる期間が2~3ヶ月ということです。
ちなみに、買主が住宅ローンの本審査に落ちてしまうと、売買契約が白紙に戻ることになります。
ですから、売主は、売買契約締結後に家を探し始めて、新居の契約や引っ越しは本審査に買主が通ってからにしましょう。
引き渡しまでに準備すること
引き渡しまでに準備することは意外に多いので、しっかりと整理して、不明な点があれば速やかに不動産会社に相談しましょう。
早速、引き渡しまでに準備しておくことを一つずつ確認していきましょう。
- 所有権移転登記の準備
- 抵当権の抹消準備
- 土地の実測や境界確認
- 現地確認
- 引越し
- その他
所有権移転登記の準備
登記申請は、司法書士に依頼することが多いので、司法書士や不動産会社に必要書類をしっかり確認しましょう。
特に、登記記録の住所と現住所が違うなど、登記簿に記載された内容と事実が異なる場合や、登記識別情報や権利証を紛失している場合などは、特別な手続きが必要になり、時間もかかるので、できるだけ早く準備に取り掛かってください。
所有権移転登記の準備をきちんとしないと、契約書で約束した期日に所有権移転登記ができないので、細心の注意をしてください。
抵当権の抹消準備
売却物件に抵当権が設定されているなら、ローンの残債額を金融機関に確認し、ローンの全額返済と抵当権抹消のための準備を進めます。
事前に、金融機関や不動産会社と相談して、抵当権抹消にかかる金融機関のスケジュールと引き渡しのスケジュールをきちんと調整しましょう。
土地の実測や境界確認
土地家屋調査士に依頼して行いますが、特に、境界の確認は隣地所有者も立ち会うので、しっかりと対応しましょう。
境界がよく分からない場合や、境界から越境しているものがある場合、隣人とトラブルがある場合などは、境界確認に時間がかかることもあるので、こちらも早めに準備することをおすすめします。
現地確認
引き渡しまでに、「売主」「買主」「不動産会社」が立ち会って現地の確認するのが原則です。
その際に、隣地との境界、付帯設備の引継ぎ、物件の修復などが契約条件になっているのであれば、そのことも確認をして、引き渡し後にトラブルがないようにしましょう。
引越し
引き渡しまでに退去を済ませるのが原則です。
買主に物件を確実に引き渡せるように、什器・備品等の付帯設備の引き渡し条件をしっかりと確認した上で準備をしておきましょう。
賃貸中の物件の場合、賃借人の退去が条件になっているのなら、賃借人や管理会社と十分に調整しておかないと、賃借人の退去をめぐって引き渡しが遅れることもあります。
また、ガス・水道・電気等の公共料金の精算も、不動産会社に確認しながら忘れずに準備しておきましょう。
その他
上記以外にも、次のような準備も必要ですので、不動産会社に確認しながらきちんと準備しておきましょう。
- 公租公課(固定資産税や都市計画税)や公共料金、管理費などの精算
- 買主へ引き渡す書類等の整理(建築関係書類や鍵等)
引き渡し当日の流れ
引き渡し準備を整え、引き渡し当日に備えますが、当日はどのようなことをするかも事前に知っておくとスムーズに引き渡しができるので、解説します。
家を売る際の引き渡し手順
物件の最終チェックを現地で行ってから引き渡しの手続きをするという流れになりますが、この際、売主と買主が立ち会って境界の確認や設備表などに基に、契約書に記載されている通りの状態で引き渡しができるかを確認します。
その後、銀行もしくは不動産会社において決済を行います。なお、順番が前後することもあり、売主が立ち会わないケースもあります。
引き渡しの当日の流れは次のような順番で行われます。
- 登記申請の依頼
- 残代金の受領
- 固都税等の精算
- 関係書類の引き渡し
- 鍵の引き渡し
- 諸費用の支払い
1.登記申請の依頼
司法書士に必要書類を渡して、所有権移転などの登記依頼をします。
不動産の所有者であることの本人確認も司法書士に依頼するので、抵当権抹消登記や住所変更登記などの登録免許税がかからなくても、司法書士への費用が通常発生します。
2.残代金の受領
売買金額から手付金を差し引いた残代金を受け取り、領収書を発行します。領収書は不動産会社が準備します。
3.固都税等の精算
固都税(固定資産税・都市計画税)やマンションの場合の管理費・修繕積立金も清算し、該当金額を受け取って領収書を発行します。
清算は、引き渡し日までの金額を日割りで計算し、引き渡し前日までが売主、当日からは買主の負担になるように清算するのが一般的です。
4.関係書類の引き渡し
買主に引き継ぐべき書類をまとめて引き渡します。
引き渡す書類の内容としては、「管理規約」「分譲時のパンフレット」「付帯設備の保証書や取扱説明書」などが含まれます。
かなりの量になるので、物件内の分かる場所に保管し、その旨を買主に伝えるという形で引き渡す場合もあります。
5.鍵の引き渡し
買主に、玄関の鍵、勝手口や門扉など建物のすべての鍵を引き渡して、その確認をします。
確認がすむと、「不動産引渡確認証(引渡確認票)」に署名、捺印してもらいます。
6.諸費用の支払い
不動産会社への仲介手数料や司法書士への報酬など、諸費用を支払います。領収書は不動産会社が準備します。
残代金決済や物件の引き渡しの日程や書類などのセッティングは不動産会社が行ってくれますが、残代金決済終了後、当日中に法務局に売主から買主への所有権移転登記などの申請を行うので、決済は平日の午前中に行うことが多いことを頭の片隅に入れておいてください。
引き渡し日の延期は可能なのか?
通常では、売買契約書に引き渡し日を定めますが、基本的に引き渡し日を延期することができません。
もし、期日までに引き渡しができないとなると、違約金が発生します。
違約金の額は、売買契約によって異なりますが、一般的には、売買代金の20%とすることが多いです。
仮に、売却価格が3,000万円で引き渡しを延期したら、違約金が600万円となります。
売却価格によってはかなり高額な費用となりますので、売買契約書に定めた日にきちんと引き渡しができるように、引き渡しの日程調整と準備はしっかりと行いましょう。
消費税の増税!引き渡しの際の仲介手数料はどうなるか?
2019年10月1日に消費税率が8%から10%に引き上げられます。
家を売ることを検討している人の中には、「消費税の増税で、仲介手数料や販売価格に影響が出るの?」と気になっている人も多いのではないでしょうか?
そこで、最後に、消費税増税で仲介手数料や販売価格にどんな影響がでるのか解説します。
引き渡し日も関係する?消費税増税の影響
繰り返しになりますが、2019年10月1日に消費税率が10%へと引き上げられます。
ただ、売主の立場や売却方法によっては、消費税が8%のまま据え置きになるケースもあるので、まずはそれをまとめます。
- 個人間の売買の場合:消費税はかかりません。
- 不動産会社などに仲介を依頼した場合:仲介手数料に消費税がかかります。
- 売主が不動産会社などの法人の場合:建物価格に消費税がかかります。
②に関しては、2019年9月30日までに売買契約を完了すれば消費税は8%です。
③に関しては、2019年9月30日までに引き渡して、最終決済が完了すれば消費税は⑧%のままです。
ちなみに、リフォームを行う場合、請負契約が2019年3月31日までに完了しているか、最終な決済が2019年9月30日までに完了すれば、消費税は8%になります。
まとめ:引き渡しをスムーズに行うには準備が大切
引き渡しには、必要書類の準備や、やれなければならない手続きがあるので、買主と不動産会社によく相談し、無理のないスケジュールで引き渡し日を決めましょう。
引き渡しまでは不動産会社としっかり連携を取ろう
家を売る機会なんてそうそうないだけに、引き渡しに関しても、未経験の方がほとんどだと思います。
「慣れないことだけに失敗しそう」「まだ、分からないことが多くて何かと不安」「もっと簡単にすませたい」と考えている人も多いでしょう。
もし、売却をお願いした不動産会社が、誠実で売主に対して親身になってくれる会社なら、任せられることは全て任せてしまうというのも1つの手です。
不動産会社は売却のプロです。
不安や疑問は相談し、任せられるところはお任せして、スムーズに引き渡しを完了させましょう。