家を売る際、気になるのが『税金』ではないでしょうか?
基本的に、税金は不動産を売却したその売却額に税率をかけたものが納税額になります。
売却額によっては、税金だけで大きな額になってしまいますが、控除や特例などを上手く活用することで、ぐっと節税することができ、場合によっては税金がゼロになることも珍しくありません。
そこで、不動産売却の際に適用される控除や特例をまとめましたので、ご自分のケースに当てはまるかどうか確認してみましょう。
3,000万円特別控除で所得税が無課税に!
不動産売却をした際の控除で一番有名なのが、「3,000万円特別控除」です。
この控除は対象者が多いので、絶対に押さえておきましょう。
以下、3,000万円特別控除の概要や適用条件をご紹介します。
制度の概要
マイホーム(居住用財産)を売ったときは、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる特例があります。
これを、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例といいます。
なお、国税庁では、3,000万円特別控除について以下の通り、紹介しています。
参考URL:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm
特例を受けるための適用条件
1.【自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地や借地権を売ること。なお、以前に住んでいた家屋や敷地等の場合には、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。】
※住んでいた家屋又は住まなくなった家屋を取り壊した場合は、次の2つの条件全てに当てはまることが必要です。
- その敷地の譲渡契約が、家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
- 家屋や取り壊してから譲渡契約を締結した日まで、その敷地を貸駐車場などその他の用に供していないこと。
2.【売却年の前年及び前々年にこの特例(「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例」によりこの特例の適用を受けている場合を除きます。)又はマイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていないこと。】
3.【売却年、その前年及び前々年にマイホームの買換えやマイホームの交換の特例の適用を受けていないこと。】
4.【売った家屋や敷地について、収用等の場合の特別控除など、他の特例の適用を受けていないこと。】
5.【災害によって滅失した家屋の場合は、その敷地を住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。】
(注) 東日本大震災により滅失した家屋の敷地の場合は、災害があった日から7年を経過する日の属する年の12月31日までとなります。
6.【売手と買手が、親子や夫婦など特別な関係でないこと。】
特別な関係には、このほか生計を一にする親族、家屋を売った後その売った家屋で同居する親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人なども含まれます。
(特定増改築等)住宅借入金等特別控除については、入居した年、その前年又は前々年に、このマイホームを売ったときの特例の適用を受けた場合には、その適用を受けることはできません。
また、入居した年の翌年又は翌々年中に、(特定増改築等)住宅借入金等特別控除の対象となる資産以外の資産を譲渡し、この特例の適用を受ける場合にも、(特定増改築等)住宅借入金等特別控除の適用を受けることはできません。
※3,000万円の特別控除は、次のような家屋には適用されません。
- この特例を受けることだけを目的として入居したと認められる家屋
- 居住用家屋を新築する期間中だけ仮住まいとして使った家屋、その他一時的な目的で入居したと認められる家屋
- 別荘などのように主として趣味、娯楽又は保養のためのに所有する家屋
3,000万円の特別控除と併用可能な軽減税率の特例
売却年の1月1日現在で、そのマイホームの所有期間が10年を超えている場合、3,000万円の特別控除を適用した後の金額に対して「軽減税率」が適用されます。
こちらも、概要と適用条件が国税庁のホームページに明示されていますので、ご紹介します。
参考URL:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3305.htm
制度の概要
自分が住んでいたマイホーム(居住用財産)を売って、一定の条件に当てはまる場合、長期譲渡所得の税額を通常の場合よりも低い税率で計算する軽減税率の特例を受けることができます。
特例を受けるための適用条件
1.【日本国内にある自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地を売ること。なお、以前に住んでいた家屋や敷地の場合には、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。また、これらの家屋が災害により滅失した場合には、その敷地を住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。】
※住んでいた家屋又は住まなくなった家屋を取り壊した場合は、次の3つの条件全てに当てはまることが必要です。
- 取り壊された家屋及びその敷地は、家屋が取り壊された日の属する年の1月1日において所有期間が10年を超えるものであること。
- その敷地の譲渡契約が、家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
- 家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日まで、その敷地を貸駐車場などその他の用に供していないこと。
2.【売却年の1月1日において売った家屋や敷地の所有期間がともに10年を超えていること。】
3.【売却年の前年及び前々年にこの特例を受けていないこと。】
4.【売った家屋や敷地についてマイホームの買換えや交換の特例など他の特例を受けていないこと。】
ただし、マイホームを売ったときの3,000万円の特別控除の特例と軽減税率の特例は、重ねて受けることができます。
5.【親子や夫婦など特別の関係がある人に対して売ったものでないこと。】
特別の関係には、このほか生計を一にする親族、家屋を売った後その売った家屋で同居する親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人なども含まれます。
(特定増改築等)住宅借入金等特別控除については、入居した年、その前年又は前々年に、この軽減税率の特例の適用を受けた場合には、その適用を受けることはできません。
また、入居した年の翌年又は翌々年中に、(特定増改築等)住宅借入金等特別控除の対象となる資産以外の資産を譲渡し、この特例の適用を受ける場合にも、(特定増改築等)住宅借入金等特別控除の適用を受けることはできません。
税率
続いて、軽減税率における税率を紹介します。税率は以下の通りです。
課税長期譲渡所得金額(=A) | 税額 |
---|---|
6,000万円以下 | A✕10% |
6,000万円超 | (A-6,000万円)✕15%+600万円 |
なお、課税長期譲渡所得金額は次の計算式で算出することができます。
また、平成25年から平成49年(2037年)までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額の2.1%を所得税と併せて申告・納付することになります。
マイホームの買い換えに使える場合がある買換え特例
マイホームを買い換えた場合、一定の条件を満たせば、
この特例は、先に売却して後から購入した場合や、先に購入して移り住み、それから売却した場合でも適用できるので、意外と便利です。
こちらの特例についても、国税庁のホームページで紹介されています。
参考URL:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3355.htm
買換え特例の概要
特定のマイホーム(居住用財産)を平成31年(2019年)12月31日までに売って、代わりのマイホームに買い換えた場合、一定の条件のもと、譲渡益に対する課税を将来に繰り延べることができます(譲渡益が非課税となるわけではありません。)。
これを、特定の居住用財産の「買換えの特例」といいます。
例えば、1,000万円で購入したマイホームを5,000万円で売却し、7,000万円のマイホームに買い換えた場合には、通常の場合、4,000万円の譲渡益が課税対象となりますが、特例の適用を受けた場合、売却した年分で譲渡益への課税は行われず、買い換えたマイホームを将来譲渡したときまで譲渡益に対する課税が繰り延べられます。
課税が将来に繰り延べられるとは、どういうことか?
上記の例により説明すると、将来、買い換えたマイホームを8,000万円で売却した場合に、売却価格8,000万円と購入価格7,000万円との差額である1,000万円の譲渡益(実際の譲渡益)に対して課税されるのではなく、実際の譲渡益1,000万円に特例の適用を受けて課税が繰り延べられていた4,000万円の譲渡益(課税繰延べ益)を加えた5,000万円が、譲渡益として課税されるということです。
特例を受けるための適用条件
1.【自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地や借地権を売ること。以前に住んでいた家屋や敷地等の場合には、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで売ること。】
※住んでいた家屋又は住まなくなった家屋を取り壊した場合は、次の3つの条件全てに当てはまることが必要です。
- 取り壊された家屋及びその敷地は、家屋が取り壊された日の属する年の1月1日において所有期間が10年を超えるものであること。
- その敷地の譲渡契約が、家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
- 家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日まで、その敷地を貸駐車場などその他の用に供していないこと。
2.【売却年、その前年及び前々年にマイホームを譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例(措法35:ただし、同条第3項に規定する被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例を除く)、又はマイホームを売ったときの軽減税率の特例若しくはマイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていないこと。】
3.【買い換えたマイホームは、日本国内にあるもので、売ったマイホームについて、収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと。】
4.【売却代金が1億円以下であること。】
なお、この特例の適用を受けるマイホームと一体として利用していた部分を別途分割して売却している場合における1億円以下であるかどうかの判定は、マイホームを売却した年の前々年から翌々年までの5年間の分割して売却した部分も含めた売却代金により行います。
このため、マイホームを売却した年、その前年及びその前々年の売却代金の合計額が1億円以下であることから、この特例を受けていた場合で、マイホームを売却した年の翌年又は翌々年にこの特例の適用を受けたマイホームの残りの部分を売却して売却代金の合計額が1億円を超えた場合には、その売却の日から4ヶ月以内に修正申告書の提出と納税が必要となります。
5.【売った人の居住期間が10年以上で、かつ、売却年の1月1日において売った家屋やその敷地の所有期間が共に10年を超えるものであること。】
6.【買い換える建物の床面積が50平方メートル以上のものであり、買い換える土地の面積が500平方メートル以下のものであること。】
7.【マイホームを売った年の前から翌年までの3年の間にマイホームを買い換えること。また、買い換えたマイホームには、一定期限までに住むこと。】
なお、買い換えたマイホームを住まいとして使用を開始する期限は、そのマイホームを取得した時期により次のようになります。
- 売却年かその前年に取得したときは、売却年の翌年12月31日まで
- 売却年の翌年に取得したときは、取得した年の翌年12月31日まで
8.【買い換えるマイホームが、耐火建築物の中古住宅である場合には、取得の日以前25年以内に建築されたものであること、又は一定の耐震基準を満たすものであること。】
9.【買い換えるマイホームが、耐火建築物以外の中古住宅である場合には、取得の日以前25年以内に建築されたものであること、又は、取得期限までに一定の耐震基準を満たすものであること。】
(注) ただし、この条件は、平成30年1月1日以後に譲渡資産の譲渡をし、かつ、同年4月1日以後に買換資産を取得する場合に適用され、同年1月1日前に譲渡資産を譲渡した場合や同年4月1日前に買換資産を取得した場合には適用されません。
10.【親子や夫婦など特別の関係がある人に対して売ったものでないこと。】
特別の関係には、このほか生計を一にする親族、家屋を売った後その売った家屋で同居する親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人なども含まれます。
(特定増改築等)住宅借入金等特別控除については、入居した年、その前年又は前々年に、このマイホーム買い換えたときの特例の適用を受けた場合には、その適用を受けることはできません。
また、入居した年の翌年又は翌々年中に、(特定増改築等)住宅借入金等特別控除の対象となる資産以外の資産を譲渡し、この特例の適用を受ける場合にも、(特定増改築等)住宅借入金等特別控除の適用を受けることはできません。
不動産売却で損失が出た時の譲渡損失の通算と繰越
不動産売却をして、損失が出た場合にも受けられる特例があります。
この特例は、マイホームを買換えた場合の「譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」といいます。
こちらの特例についても国税庁のホームページから引用します。
参考URL:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3370.htm
譲渡損失の通算と繰越の概要
マイホーム(旧住宅)を平成31年(2019年)12月31日までに売却して、新たにマイホーム(新住居)を購入した場合に、旧居宅の譲渡による損失(譲渡損失)が生じたときは、一定の条件を満たすものに限り、その譲渡損失をその年の給与所得や事業所得など他の所得から控除(損益通算)することができます。
さらに、損益通算を行っても控除しきれなかった譲渡損失は、譲渡の年の翌年以後3年内に繰り越して控除(繰越控除)することができます。
譲渡損失の通算と繰越の適用条件
1.【自分が住んでいるマイホームを譲渡すること。なお、以前に住んでいたマイホームの場合には、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡すること。】
また、この譲渡には、譲渡所得の基因となる不動産等の貸付けが含まれ、親族等への譲渡は除かれます。
※住んでいた家屋又は住まなくなった家屋を取り壊した場合は、次の3つの条件全てに当てはまることが必要です。
- 取り壊された家屋及びその敷地は、家屋が取り壊された日の属する年の1月1日において所有期間が5年を超えるものであること。
- その敷地の譲渡契約が、家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
- 家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日まで、その敷地を貸駐車場などその他の用に供していないこと。
2.【譲渡の年の1月1日における所有期間が5年を超える資産(旧居宅)で、日本国内にあるものの譲渡であること。】
3.【災害によって滅失した家屋で当該家屋を引き続き所有していたとしたら、譲渡の年の1月1日において所有期間が5年を超える家屋の敷地の場合は、その敷地を災害があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで(住まなくなった家屋が災害により滅失した場合は、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで)に売ること。】
東日本大震災により滅失した家屋の敷地の場合は、災害があった日から7年を経過する日の属する年の12月31日までとなります。
4.【譲渡の年の前年の1月1日から売却年の翌年12月31日までの間に日本国内になる資産(新居宅)で家屋の床面積が50平方メートル以上であるものを取得すること。】
5.【買換資産(新居宅)を取得した年の12月31日において、買換資産について償還期間10年以上の住宅ローンを有すること。】
まとめ:家の売却は救済措置が意外に多い
マイホームを売却するとかなり大きなお金が発生することもあり、「それだけ税金も高くなるのでは?」と心配している人も多いと思います。
けれど、課税対象になる課税所得額は、売却額そのものではありません。
この式からもご理解いただけるように、売却額=課税所得額ではありません。
実際、最高3,000万円の控除を受けると、譲渡所得税がなくなるということも結構あります。
控除額も考えて売却計画を立ててみよう
「できるだけ高く売りたい、でも課税金額が大きくなるのはちょっと…」と考えている人も多いでしょう。
ただ、実際の課税金額を計算してみると、予想以上に手元にお金が残る可能性もあります。
住み替えなどの場合は、諦めていた物件を買えるだけの資金を用意できるかもしれません。
不動産売却は大きな金額が発生するので、その後の人生計画に与える影響も大きくなります。
ぜひ一度、ご自分が控除対象者か確認してみてください。
コメントを残す