親名義の家(不動産)を売りたい!売却方法を4つのパターンで解説!

少子高齢化の影響で、親が亡くなったり、施設に入居することになったため、『親が住んでいた家を売りたい』と考える人が増えています。

しかし、親名義の家は、たとえその子供であっても売却することはできません。

<strong>うり男</strong>
じゃあ親から家を相続した場合や親が施設に入った場合、残った家はどうすればいいの?

親名義の家を子供が売るケースとしては、主に次の4つが考えられます。

  • 親名義の家を親の代わりに子供が売却する
  • 親が施設に入居するので親名義の家を子供が売却する
  • 親が住んでいた家を相続して売却する
  • 親が自分の家を贈与目的で売却する

<strong>家売る博士</strong>
今回は、上の4つのパターンを想定して、親名義の家を子供が売却する方法を解説するよ!

親名義の家を親の代わりに子供が売る場合

親の代わりに子供が売却

親名義の家を売る最も簡単な方法は、『代理による売却』です。

代理とは、本人に代わりに別の人間が意思表示をし「法律行為」を行うことです。

<strong>家売る博士</strong>
不動産の売却なども「法律行為」に該当するよ!

代理で家を売る場合、その効果は本人に及ぶので、親の家を代理で売る場合、その代金は本人である親に支払われます。

また、代理人は自分で判断して法律行為をすることができます。

<strong>うり男</strong>
つまりどういうこと?
<strong>家売る博士</strong>
例えば、買主から「3,000万円で売ってくれ」と言われた際に、代理人は本人の了承を得ずに、売るかどうかの判断をすることができるんだ!

なお、代理人には『任意代理』『法定代理』の2種類があります。

  • 任意代理:親と代理人が契約することで成立する
  • 法定代理:法律の規定によって成立する

親が健康で十分な判断能力がある時に親名義の家を子供が代理で売る場合は、『任意代理』というかたちになります。

任意代理の例としては、「親が遠方に住んでいる」「仕事の都合等の理由で親が売買契約に立ち会えない場合」などが該当します。

任意代理で親名義の家を売却する方法

任意代理で親名義の家を売る場合は、買主や不動産会社からすれば、子供が本当に親の代理人なのか確証がほしいですよね。

そのため、『親が子供へ代理権を委任している』ことを第三者に示す必要があります。

<strong>家売る博士</strong>
その際に重要なのが『委任状』だよ!

委任状を作成する際のポイントは、付与する代理の内容を具体的に明記することです。

基本的には、売買契約書に記載されている金額や引渡し時期、手付金の額など、契約の要点部分を明記し、代理権の範囲を小さくしておくことでトラブルを防ぐことができます。

具体的には、売買金額等の諸条件を明記し、代理人の判断で値引きできる範囲を限定して、代理人の判断要素を最小限に留めておくことなどが当てはまります。

なお、委任状は、親が実印を押し、印鑑証明書を添付することが一般的です。

また、任意代理の場合は本人確認をします。

<strong>うり男</strong>
どうして本人確認をする必要があるの?
<strong>家売る博士</strong>
それは、「無権代理」というリスクから買主を守るためだよ!

無権代理とは、本当は代理権が無いのに代理人のふりをすることです。

親子であれば、子供が親の印鑑証明書付の委任状を作ることは比較的簡単なため、中には無権代理を行う人もいるのです。

無権代理人と結んだ契約の効果は基本的に無効です。

<strong>家売る博士</strong>
これは、買主にとっては相当のリスクだよね?
<strong>うり男</strong>
たしかにそうだね…

そこで、任意代理人による売却では、買主または不動産会社、司法書士などによって、本人(親が子供に委任する場合は親)の意思確認をするのが通例となっています。

親が施設に入居するので親名義の家を子供が売却する場合

親が施設に入居

今まで説明してきた任意代理は、親の判断能力が健全な状態であることが前提です。

もし、親が認知症などで判断能力がなくなってしまったり、衰えてしまった場合は、「本当に親が子供に代理権を与えたか?」判断しづらいですよね?

<strong>家売る博士</strong>
こういう場合は、任意代理とは違う方法で手続きをするよ!

親が認知症になり、「判断能力がない、あるいは判断能力が乏しい」と判断されると、親は「制限行為能力者」となり、単独でできる法律行為が制限されてしまいます。

制限行為能力者には、認知症患者の他にも、幼児や重度の精神上の障がいがある方が該当し、症状の重度によって次のように分類されます。

  • 成年被後見人
  • 被保佐人
  • 被補助人

※症状は上から順に重くなっています

それぞれ解説していきます。

親が成年被後見人の場合

成年被後見人とは、精神上の障がいにより事理を弁識する能力を欠く状況にある者で、家庭裁判所から後見開始の審判を受けた人のことです。

成年被後見人になると「判断能力を欠く」とみなされるので、単独で行える法律行為も日用品の購入など日常生活に関するものに限定されます。

そのため、不動産の取引も単独で行うことはできず、必ず法定代理人である『成年後見人』が行わなければなりません。

親が被保佐人の場合

被保佐人とは、精神上の障がいにより事理の弁識する能力が著しく不十分である者で、家庭裁判所から保佐開始の審判を受けた人をいいます。

被保佐人は特定の法律行為に関して、保佐人の同意が必要です。

不動産取引は、この「特定の法律行為」に該当するので、被保佐人の不動産を売買するには、保佐人の同意が必要になります。

親が被補助人の場合

被補助人とは、精神上の障がいにより事理を弁識する能力が不十分である者で、家庭裁判所から補助開始の審判を受けた人です。

<strong>うり男</strong>
なんだか分かりづらいな…
<strong>家売る博士</strong>
要するに、「重要な法律行為を1人でもできなくはないけど、適切に行えない可能性があるから他人の援助を受けたほうがいんじゃない?」っていう人のことだよ!

補助開始の審判自体は、被補助人の法律行為を制限するものではありません。

そのため、特定の法律行為において補助人の同意を要する旨の審判、または、特定の法律行為において補助人に代理権を付与する旨の審判が同時に行われます。

<strong>家売る博士</strong>
少し分かりづらいと思うから、要点を簡単にまとめたよ!
不動産取引の場合
  • 同意を要する旨の審判が行われた場合:補助人の同意を得て取引する
  • 代理権を付与する旨の審判が行われた場合:補助人が代理人として取引する

また、このような制度を「法定後見制度」と呼びますが、この制度を利用することで、親が重度の認知症になった場合でも成年後見人等が代理人となって親名義の家や土地を売ることができます。

ただし、これには注意すべき点があります。

それは、法定後見制度において、成年後見人などには、「弁護士」や「司法書士」が選任されるということです。

<strong>家売る博士</strong>
法定後見制度では、子供などの家族が成年後見人として選ばれることはないんだ!
<strong>うり男</strong>
どうして家族や成年後見人として選ばれないの?
<strong>家売る博士</strong>
過去、成年後見人に選ばれた子供が親の財産を勝手に使い込んでしまうという悪質なケースが多かったからだよ!

そのため、現在では、第三者である弁護士等が成年後見人として選任されることが一般的です。

ただし、成年後見人は財産を運用することはできません。

また、アパート建築などのような相続対策もできません。

<strong>家売る博士</strong>
あくまで、単純な売却などの必要最小限の権限が与えられていると理解しておこう!
<strong>うり男</strong>
けど、赤の他人に権限が付与されるのは不安だな…
<strong>家売る博士</strong>
そういう人は、「任意後見制度」を活用するといいよ!

任意後見制度とは、親の判断能力が十分なうちに、将来、精神上の障がいにより事理を弁識する能力が不十分になった際の生活、療養介護および財産の管理について、あらかじめ定めた代理人に委託することができる制度です。

任意後見制度で定めた代理人のことを「任意後見人」と呼び、任意後見人は家族でもなることができます。

選定方法は、親と任意後見人との間で公正証書による任意後見契約を締結しておきます。

その後、親の事理を弁識する能力が不十分な状況となると、親族や任意後見人などの請求によって家庭裁判所が「任意後見監督人」を選任します。

任意後見人は、任意後見監督人の監督下で、親を代理して不動産の売却など法律行為をすることができます。

ただ、親が認知症になった後にこの制度を利用することはできません

<strong>家売る博士</strong>
親御さんが元気なうちに話し合っておこう!

親が住んでいた家を相続して売却する場合

相続した家の売却

実は、相続した家に関しても、なんの手続きもなく子供が勝手に売却することはできません。

ここでは、親名義のままの不動産を売却する方法について解説します。

相続しても家の名義が親のままになる理由と売却方法

<strong>うり男</strong>
親から家を相続したら自動的に自分のものになるんじゃないの?
<strong>家売る博士</strong>
「所有権移転」をしないと、親の家がほんとうの意味で自分のものになったとは言えないんだよ!

相続が発生しても登記簿謄本の名義変更義務はないので、親名義のままという状態になることも多いです。

しかし、第三者に売却する場合は買主へ所有権移転登記を行うのが普通なので、相続人に名義が変更されていなければなりません。

つまり、親名義のまま相続した家を売ることはできないので、一旦、相続人へ登記を移転する『所有権移転登記』をする必要があります。

<strong>家売る博士</strong>
もし、将来親の家を売却したり担保設定をする予定があるなら、相続後速やかに登記を完了させておこう!

また、親の家を相続するとなると、他にも相続人がいる場合などはトラブルになりがちです。

事前に相続人同士でしっかりと話し合って、トラブルを未然に防ぎましょう。

なお、親の不動産を相続する際にありがちな相続人間のトラブルに関しては、「家を兄弟間で売る方法は?全体の流れや注意点などもあわせて解説!」で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。

親が自分の家を贈与目的で売却する場合

贈与目的の売却

最近、子供が住宅を購入するための頭金を捻出するために、使っていない親名義の土地や家を売るケースがよく見られます。

親名義の不動産を売却しても、そのお金は親に支払われるので、子供にそのお金を移転するには『贈与』する必要があります。

そこで、最後に、贈与目的で親名義の不動産を売却する場合について解説します。

贈与目的の不動産売買で発生する税金と受けられる特例

贈与とは、自分の財産を無償で相手方に与える意思を示し、相手方がそれに受託することで成立する、個人間同士の無償の契約のことをいいます。

<strong>家売る博士</strong>
贈与では、受け取った人(受贈者)に対して贈与税が課せられるよ!

贈与税は、1年間で110万円の基礎控除額がありますが、税率がかなり高いので注意が必要です。

ただし、子供がマイホームを購入する場合の資金とする場合に限り、贈与税の非課税枠が拡大する「住宅取得等資金贈与の非課税制度」が適用されます。

この制度では、2020年3月31日までの間に一般住宅の取得のために行われた贈与は700万円まで非課税になります。

<strong>家売る博士</strong>
つまり、110万円の基礎控除と合わせて810万円まで非課税で贈与を受け取ることができるよ!

さらに、消費税が10%に増税される2019年10月以降に引渡し契約をして、2019年4月1日から2020年3月31日までに契約を締結した場合は、非課税枠が2,500万円まで拡大されます。

<strong>家売る博士</strong>
つまり、110万円の基礎控除と合わせて2,160万円まで非課税になるよ!

高い税率がかかることで有名な「贈与」も、子供の住宅取得資金に限って言えば、「住宅取得等資金贈与の非課税制度」が活用できます。

そのため、子供のマイホーム購入のための資金を捻出したいのであれば、親名義の不動産を売ってから、子供へ現金を贈与したほうが有利です。

また、子供のマイホーム購入目的以外で資金移転をする場合は、『親子間での売却』がおすすめです。

親子間で不動産を授受する際の贈与と売却については、「親から子供へ家を売る場合の全知識!売却と贈与どちらがおすすめ?」で詳しく解説しています。

まとめ

親名義の不動産を売却する方法について解説してきましたが、いかがだったでしょうか?

基本的に、他人名義の不動産を売却することはできませんが、これは親子関係にある場合にも当てはまります。

親名義の家を子供が売る場合は、親の判断能力があるか、ないかで売却の方法が変わってきますし、相続した場合は名義変更をする必要があります。

また、親名義の家を親が売って子供に資金を移転する場合は、贈与税や受けられる特例に注意しましょう。

なお、一言に「親名義の家を売る」と言ってもいろいろなパターンがあるので、ご自分の状況に合わせて適切な方法を選択してくださいね。

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