『実家を相続したけど、すでにマイホームを購入して住んでいるから売却したい』という人はいませんか?
ただ、実家の売却はマイホームの売却とは勝手が違う部分もあり、安易に売却してしまうと、後々後悔してしまう人も多いようです。
また、相続した実家を売却する前に実家の片づけをする人も多いですが、勝手に片づけてしまうと、後々トラブルに発展することもあります。
そこで今回は、次の3つにポイントに絞って、実家を売却するためのノウハウをご紹介します。
- 相続した実家を売る時の流れ
- 相続した実家を売った時の税金
- 実家を売る前に片づけをする時のポイント
相続した実家を売却する時の流れ
実家を相続し、売却する場合の流れは次の通りです。
- 相続登記を済ませる
- 査定を依頼する
- 不動産会社と媒介契約を結ぶ
- 実家を売りに出す
- 購入希望者に内覧してもらう
- 条件交渉する
- 売買契約を締結する
- 物件を引き渡して登記する
- 不動産会社に仲介手数料を支払う
STEP1.相続登記を済ませる
相続した家の場合、『相続登記』をしていないと売ることはできません。
また、相続登記をするためには、該当する家に関して、権利関係を明確にする必要があります。
相続登記とは、亡くなった被相続人(親)が所有していた不動産を、相続で継承したあなたが所有権を持つことを登記簿に反映させる手続きのことです。
登記は法務局で行いますが、登記官には、「相続を原因とする所有権の移転登記」をしたい旨を伝えましょう。
登記に必要な書類は相続事情によって異なりますので、事前に法務局に電話で確認して準備しておきましょう。
STEP2.査定を依頼する
相続登記が済んだら、実際に家を売りに出すために行動していきましょう。
ただし、いきなり不動産会社に相談に行くのはおすすめしません。
まずは、実家の周辺エリアの売出物件などの価格をチェックし、その地域のおおよその『相場』を把握しましょう。
さらに、実家そのものの『相場』も知っておく必要があります。
ただ、1社のみに査定依頼して売却を決めてしまうのは危険です。
理想としては5,6社に「簡易査定」を依頼し、その中で信頼できそうな不動産会社を絞り込みます。
簡易査定の後は、さらに信頼できそうな会社2,3社を絞り込み、「訪問査定」を依頼します。
実際に実家を見てもらって、さらに制度の高い査定額を提示してもらいましょう。訪問査定を依頼するときには、以下のポイントをチェックしましょう。
- 納得のいく説明をしてくれるか?
- 売り主が見落としているような実家の魅力を見つけられるか?
- 担当者との相性がいいか?
残りはほとんど不動産会社にお任せになるので、『信頼できて頼れる不動産会社を見つけられるか』が実家売却の成功の決め手と言えるでしょう。
STEP3.不動産会社と媒介契約を結ぶ
訪問査定を依頼した不動産会社の中から、相性が良く、売却を有利に進めてくれそうな不動産会社を選び、『媒介契約』を締結します。
媒介契約には次の3種類があります。
- 一般媒介契約
- 専任媒介契約
- 専属専任媒介契約
それぞれの詳しい内容は「家を売る際の媒介契約はどれがおすすめ?各契約内容を徹底比較!」で紹介しているので参考にして下さい。
STEP4.実家を売りに出す
査定額をもとに売却価格を決めたら、売り出しになります。
販売活動では、広告の作成を行い、チラシを作成したり、フリーペーパーに掲載してもらったりしますが、これらの実務はすべて不動産会社がやってくれます。
STEP5.購入希望者に内覧してもらう
販売活動期間中に内覧希望の連絡が入れば『内覧』をします。
希望日時を調整して物件の案内をしますが、この実務も基本的にすべて不動産会社がやってくれます。
ただし、不誠実な対応をしたり、印象が悪くなるようなことをすれば、それだけ、不動産に対する印象も悪くなってしまいます。
内覧者を迎える際は、できるだけ笑顔で、質問などを受ければ分かりやすく丁寧に説明するなど、誠実な対応を心掛けましょう。
STEP6.条件交渉する
内覧希望者が物件を気に入ってくれたら、ほとんどのケースで条件交渉に入ります。
この際に、心しておくことは、若干の値下げを要求される可能性があるということです。
そのことも踏まえて売却価格の設定を行ったり、値下げに応じる代わりにその場で契約の承諾を取り付けるなど、相手の要求を上手に転がしながら、こちらにも有利な条件になるように駆け引きする必要があります。
また、実家のような中古物件の場合、「ここが古いから修理してもらえれば買うのに…」といったリフォームの要求をされることもあるます。
そのほうが売主の手間が省けるし、買主のイメージ通りになるので、そうする場合が多いようです。
STEP7.売買契約を締結する
条件交渉がまとまり、双方にとって納得のいく取引内容になったら、売主と買主の間で対象物件(実家)の『売買契約』を締結します。
不動産の売買はトラブルが起きやすい取り引きでもあります。
契約書の準備は仲介を依頼した不動産会社が担当してくれますが、契約から生じる責任は当事者である売主と買主にあります。
そのため、用意された契約書の中で意味が分からない点やよく理解できない点は、遠慮なく不動産会社の担当者に質問し、納得した上で契約を結ぶようにしてください。
売買契約を締結した時には、売買代金の一部が買主から支払われます。
STEP8.物件を引き渡して登記する
不動産の取引では、売買契約締結後に、取引対象の物件を相手に実際に引き渡す手続きが必要です。
引き渡しとは、購入した家やマンションを買主が自由に使うために一切の物品を引き渡すことです。
家の鍵をはじめ、倉庫の鍵、マンションの防犯カメラなどの付帯設備の操作に必要なリモコンなど、買主がその物件に住む際に必要な物品を全て交付します。
なお、引き渡しの際に売買代金の残額がある場合は、その支払いがなされます。
さらに、引き渡し当日に売主から買主へ『所有権移転登記』がなされますが、これらの登記手続きは不動産会社が提携している司法書士が行うのが一般的です。
STEP9.不動産会社に仲介手数料を支払う
媒介契約を結んだ際、その契約書の中に不動産会社への仲介手数料の額や支払期限、支払い方法などが定められています。
その所定の仲介手数料を不動産会社に支払います。
不動産会社に支払う仲介手数料は不動産売却金額が高くなるほど高くなる仕組みになっています。
詳しくは「家を売る際の仲介手数料の相場や計算方法は?無料の会社は怪しい?」をご覧ください。
なお、不動産会社への仲介手数料は『成功報酬型』なので、買い手がつかなかった場合は支払う必要はありません。
住んでいない実家を売却する時に受けられる税金の特例
親と同居していない実家を相続して売却する場合、不動産の売却で受けられる税金の特例は原則として受けられません。
しかし、実家が空き家になっている場合は期間限定で受けられる特例があります。
ここでは、この特例を受けるための条件などについて解説します。
相続した実家が空き家の場合に受けられる3,000万円特別控除
親(被相続人)の家を相続した子(相続人)がその住宅や敷地を売却し、一定の条件に当てはまれば、『空き家の3,000万円特別控除』が受けられます。
この特例でいう空き家とは、親が自宅として住んでいた住宅で、次の条件をすべて満たしているものに限ります。
- 1981年5月31日以前に建築されたこと
- 区分所有登記がされていないこと
- 相続する直前まで親が一人暮らしをしていたこと
なお、その土地に「母屋」や「離れ」など複数の建物が建っている場合は、親が住んでいた建物の床面積割合に応じた面積の土地が特例の対象となります。
さらに、空き家の3,000万円特別控除は2016年4月1日から2019年12月31日までの売却が対象となります。
また、以下の条件を満たしている必要があります。
3,000万円特別控除を受けるための条件とは?
①親の住んでいた住宅と敷地を相続などにより取得し、売ったこと
②2016年4月1日から2019年12月31日までの間に売ったこと
③住宅を取り壊さずに売った場合、次の条件を満たすこと
③-①:住宅・敷地を相続してから売却するまで事業用として使用したり、人に貸したりしていないこと
③-②:住宅が一定の耐震基準を満たすものであること
④住宅を取り壊してから売った場合、次の条件を満たすこと
④-①:住宅を相続してから取り壊すまで事業用として使用したり、人に貸したりしていないこと
④-②:敷地を相続してから売却するまで事業用として使用したり、人に貸したりしていないこと
④-③:取り壊してから売却するまで建物などを建てていないこと
⑤相続開始から3年目の年の12月31日までに売ること
⑥売却代金が1億円以下であること
⑦売った住宅や敷地について、相続財産を売却したときの取得費加算の特例などを受けていないこと
⑧同一の親から相続などで取得した自宅について、この特例を受けていないこと
⑨親子や夫婦など特別の関係がある人に売ったものでないこと。特別の関係がある人には、生計を一にする親族や、内縁関係にある人なども含まれる
この特例条件において注意すべきは、③-②です。
「一定の耐震基準を満たすもの」とありますが、実際に意味しているものは、1981年6月に施行された現行の耐震基準のことです。
そのため、そもそもの条件である「1981年5月31日以前に建築」された住宅の場合、この基準を満たす建物は少ないでしょう。
3,000万円特別控除を受けるための手続きは?
さて、この特例を受けるためにはどのような手続きを行ったらいいのでしょう?
空き家の3,000万円特別控除を受けるには、売却した翌年に『確定申告』をする必要があります。
その際に、市区町村長が発行する「被相続人居住用家屋等確認書」という書類を申告書に添付する必要があります。
この書類は、その住宅に親が一人暮らししていたことや、事業用や賃貸用として使われていなかったことを証明するものです。
その際には、電気やガスの閉栓証明書や、売却時に空き家であることを表示した広告の写しなどを提出する必要があります。
実家を売却する際に家具や不用品を処分する理由とは?
結論から言うと『実家を売却するのに不利になる』からです。
また、物が多いと部屋が実際よりも狭く見えてしまいます。
片付けをせずに家を売ることはできますが、その場合は、不用品は買主が処分することになるので、その際にかかる費用を値引きすることになります。
そのため、実家を売る場合は、最低限の片付けは行いましょう。
そこで、片付けをする際のポイントについて解説します。
- 片付けのスケジュールを立てる
- 処分するものを家族で把握する
- 家具や家電の処分方法を調べる
- 遺品業者や引っ越し業者に依頼するか検討する
片付けのスケジュールを立てる
スケジュールを立てずに片付けをしてしまうと、「片付けたはいいけどゴミ出しの日まで時間がある」「回収業者が来る日まで時間があるから家具を片付けられない」といったことになりかねません。
実家の片付けをする際は、「どの日に片付けをするのか?」「どの部屋から片付けるのか?」などのスケジュールを立てましょう。
処分するものを家族で把握する
実家を相続したとしても、実家にある家具などには家族の思い出が詰まっています。
あなたにとって不要な物でも、他の家族にとっては大切なものかもしれません。
実家にあるものを自分の判断で処分してしまうと、他の家族とトラブルになることがあります。
実家を片付ける際は、あらかじめ、次の2点を確認しておくとスムーズに片付けを進められます。
- 個人的に欲しいものはないか
- 不用品の処分にかかる費用は誰が負担するのか
家具や家電の処分方法を調べる
家具や家電に関しては、『買取業者』を有効活用するといいでしょう。
本や衣類など
状態の良いものは、買取業者が買い取ってくれます。
物によって買取業者が違いますが、一括で買い取ってくれる業者もあるので、面倒な場合はそういった業者に依頼するといいでしょう。
仏壇や神棚
また、信仰している宗教によっては、処分の際に儀式が必要なこともあり、もし、儀式をするのであれば、費用として3万~8万円程かかります。
家電
家電の場合、問題なく買取業者が買い取ってくれます。
ただ、その場合はお金を支払わなければなりません。
近くに家電が必要な知り合いがいれば、無料で引き取ってもらうといいでしょう。
また、エアコンに関しては買主さんと話し合いましょう。
遺品業者や引っ越し業者に依頼するか検討する
1人で片付けるのが難しい場合は、業者に依頼するという方法もあります。
数社の業者から見積もりを出してもらい、「どの範囲までのサービスを料金内でやってもらえて、オプションになるのは何か?」などを確認した上で、予算と照らし合わせて決めましょう。
また、複数の業者から見積もりを出してもらうことには、『サービスの適正価格を知る』という意味合いもあります。
まとめ:
実家を売却するとなると、マイホームを売るのとは勝手が違う部分があります。
権利関係などの手続きをしっかりしておかないとトラブルに発展することもあるので、然るべき手続きはきちんとしておきましょう。
実家を高く売るためには「片付け」まで確実にしておくこと
実家を売ることになったら、内覧の日までに片付けを済ませておきましょう。
購入希望者の多くが、内覧をして購入するかどうかの最終判断を下します。
実家を高く売りたいと思うのであれば、内覧日までに片付けを済ませ、出来る限り物がない状態で、内覧してもらえるようにしましょう。