売ることが難しい不動産の1つに『事故物件』があります。
事故物件の売却を検討している人の中には、次のような不安を抱えている人も多いのではないでしょうか?
- そもそもうちの家は事故物件に該当するの?
- 事故物件はどのようにして売るればいいの?
- 事故物件であることを告知する必要があるの?
- 事故物件の良い売却方法がないか知りたい
また、事故物件と聞くと、自殺や殺人があった物件のことを思い浮かべる人が多いと思います。
では、家に住んでいる人が病死した場合や孤独死した場合は、事故物件に該当するのでしょうか?
ここでは、事故物件を売却する方法や告知義務の有無、病死や孤独死の場合の考え方などを解説します。
事故物件とは?
事故物件とは、一般的に「建物の中」「ベランダ内」「庭先」「倉庫」「敷地内の車中」で発生した「自殺」「他殺」「不審死」「事故死」など、人の死亡に関する事件があった不動産のことを『事故物件』と呼びます。
また、住宅ローンや所有している会社の倒産などを売却理由とする金融事故を含める場合もあります。
事故物件に関しては、裁判にまでトラブルが発展することが多いです。
ここでは、実際に裁判になった事故物件の事例をいくつかご紹介します。
住宅(建物)内で事故があった事例
事例① 建物内で縊首自殺(首吊り自殺)があった中古住宅の売買
本件売買は、建物につき価値がないとして売買価額が定められ、売主の瑕疵担保責任が免責された契約であった。
しかし、裁判所は「本件建物が居住用で、しかも事件が比較的最近のことであったことから、本件事件の存在は心理的瑕疵に該当する。そして、事件は隠されたまま売買されたのであるから、売主の特約による瑕疵担保責任の免責はされない。」として、買主の損害賠償請求を認めた。
引用:参考サイト
事例② ベランダで縊首自殺(首吊り自殺)があったマンションの売買
事件後も売主は本物件で家族と平穏に生活していた。
しかし、裁判所は「本件事件の存在は、子供も含めた家族で居住することを目的とした場合、妥当性を欠くものであり、事件後6年という期間の経過もさほど長期であるとはいえない。」として、買主の契約解除と違約金請求を認めた(その後和解)。
引用:参考サイト
事例③ 蔵で縊首自殺(首吊り自殺)があったが、売買時には当該蔵は取り壊されていた住宅の売買
裁判所は、本件事件より約7年が経過し、事件のあった蔵は既に存在しておらず、本件事件を意に介さない買受希望者が多数いたこと等から、瑕疵は認められないとした。
引用:参考サイト
取り壊された建物(取り壊し予定建物)で事故が遭った事例
事例① 建物取り壊しを前提とした売買において、約1年4ヶ月前に建物内にて自殺があった事案
買主の目的は、建売住宅の建築販売。
裁判所は、本件事件が約1年4ヶ月前の出来事であること等により、本件事件は買主に告知すべき瑕疵であるとし、売買代金の25%を買主の損害額とした。
引用:参考サイト
事例② 8年7ヶ月前、建物内で殺人事件があり、その後更地となった土地の売買
買主の目的は、住宅地分譲。
裁判所は、嫌悪すべき本件事件のあった建物はすでに無くなっているものの、殺人事件は自殺等に比べて残虐性が大きく、事件後8年以上が経過するも、近隣住民より本件事件の噂を聞き、買主分譲地の購入を取り止めた者がいたこと等から、相当程度風化しているが心理的欠陥はなお存在しているとして、売買代金の5%の損害賠償を認めた。
引用:参考サイト
事例③ 8年7ヶ月前、共同住宅で焼身自殺があり、その後駐車場として使用されていた土地の売買
買主の目的は建売住宅の建築分譲。
売主は、本件事故については、売買契約時に買主担当者に説明したと主張していた。
裁判所は、本件事件から8年以上が経過していること、買主の分譲住宅は完売しており、販売価格に本件事件の影響はみられなかったこと等から、本件事件による瑕疵はないとした。
引用:参考サイト
事例③ 8年7ヶ月前、共同住宅で焼身自殺があり、その後駐車場として使用されていた土地の売買
買主の目的は建売住宅の建築分譲。
売主は、本件事故については、売買契約時に買主担当者に説明したと主張していた。
裁判所は、本件事件から8年以上が経過していること、買主の分譲住宅は完売しており、販売価格に本件事件の影響はみられなかったこと等から、本件事件による瑕疵はないとした。
引用:参考サイト
事故物件の告知義務と心理的瑕疵
事故物件に該当する場合は、売主は購入希望者にその旨を告知する義務があります。
もし、告知せずに売買契約を締結した場合は、『心理的瑕疵担保責任』を負うことになります。
ここでは、告知義務と瑕疵担保責任について解説します。
事故物件であることを隠して売ったら大変なことになる
先ほどもお伝えした通り、売主は自分が知っている過去の事故を買主に伝える義務があります。
これを『告知義務』といいます。
具体的に、何年前までの事故を告知しなければならないといった決まりはありませんが、知り得る限り買主に告知する義務があります。
また、不動産を売る場合、売主は瑕疵担保責任を負います。
瑕疵とは、住宅が本来持っているべき品質や性能を欠くことを指します。
売却後に瑕疵が発見されると、買主は売主に対して損害賠償請求や契約の解除を求めることができます。
ただ、いつまでも買主から損害賠償請求をされる可能性があると売主も大変なので、通常は、買主の了解を得て、瑕疵担保責任の全部や一部を免責することが多いです。
一番多いのが、売主が瑕疵担保責任を負う期間を「3ヶ月」とする内容で売買契約を締結するパターンで、この場合は、売却後4ヶ月以降に瑕疵が発見されても売主は責任を負う必要はありません。
しかし、瑕疵について売主が知っていたにも関わらず、それを黙って買主に告知しなかった場合は、瑕疵担保責任を免れることはできません。
例えば、事故物件の売却の際に、事故があったことを知りながら、それを隠して売り、買主がその事実を知ったとしましょう。
この場合は、その事実を知ったのが売却後4ヶ月目以降でも、買主は、売主に瑕疵担保責任を追及することができます。
そうなると、売主は心理的瑕疵を隠していたことになり、損害賠償を請求されたり契約が解除になったりと、大きな損害を被ることになるのです。
事故に関しては、それがどんなに昔にあったことでも、知っている限りは、売主は買主にその旨を必ず伝えなければなりません。
なお、告知義務に関しては「事故物件の告知義務や事故物件の定義について徹底解説!」で詳しく解説しているので、こちらもご参照ください。
病死や孤独死した場合は事故物件になる?
事故は心理的瑕疵に該当するので告知義務があると解説しました。
先ほどもお話しした通り、「自殺」「他殺」「不審死」「事故死」など、人の死亡に関する事件があった場合は心理的瑕疵に該当し、そういった物件は『事故物件』として扱われます。
では、同じように人の死にまつわるものとして、その建物内で病死したり孤独死があった場合はどうなるのでしょうか?
こちらについても、詳しく解説していきます。
事故物件か否かの分かれ目は「発見時の状態」
病死や孤独死の場合、基本的に遺体が家族や友人、管理人によって早期で発見された場合は事故物件にはなりません。
ただ、遺体の状態によっては、告知義務が生じる可能性があります。
例えば、遺体の発見が遅れて、腐敗が進んだ場合などがこの例に該当します。
腐敗が進行し、部屋の床や壁にシミができていたり、部屋全体が臭う状態など、「ここで人が死んだ」ということがすぐに分かるような状況のときは告知義務が発生するのです。
そして、そういった処置を施した場合でも、家を売る際は人が亡くなった過去があることは告知しましょう。
告知しなかった場合、腐敗跡や近所の噂などからバレた時に、クレームやトラブルの原因になる可能性が高いです。
トラブルを避けるためにも、死後経過後の日数にかかわらず、「ここで人が死んだ」という事実と死因などもお伝えしておくことをおすすめします。
事故物件を売る方法
事故物件は買主からの印象も悪く、売却するのが難しい物件ですが、まったく売れないという訳ではありません。
売り方を工夫すれば、買い手が見つかったりもします。
ここでは、事故物件を売却する方法をいくつかご紹介します。
- 値引きして売る
- 数年経ってから売る
- 更地にして売る
- 買取業者に売る
値引きして売る
値引きして売る場合、売主が考えなければならないのは『いくら値引きするか?』ということです。
たしかに、事故の内容などによっては、よほどの値引きをしないと売れない場合もあります。
ただ、初めから大幅な値引きをする必要は必ずしもありません。
事故物件を値引きして売る際の目安になるのは、『競売』と『任意売却の市場価格』です。
競売では、最低入札価格というものがあり、それに対して入札を行うことで最終的な価格が決まりますが、競売については、一般人の多くが事故物件っぽい印象を持っており、相当手を出しにくい物件です。
そのため、競売での物件価格は相場より安くなります。
そんな競売での最初のスタートラインは3割引きです。
競売の次に安いと言われるのが任意売却ですが、こちらの市場価格は相場の8割程度、つまり2割引きです。
ですから、事故物件に関しては、2割~3割引きで最初は売り出し、それでも売れない場合は4割程度まで下げて反応を見るようにしましょう。
数年経ってから売る
通常の瑕疵と違って、心理的瑕疵というのは、時間とともに世の中から風化していきます。
ですから、事故物件に関しても、事故が風化すれば値段にも影響が少なくなってきます。
事故物件を売る際には、『事故が人々の記憶に残っているか?』というのもポイントになるのです。
極端な例を出せば、縄文人が自殺した現場に建っている物件を事故物件とみなして、嫌悪する人はあまりいないですよね?
さて、ここで目安になるのが、「何年くらい経てば心理的瑕疵の告知義務がなくなるか?」ということです。
これについては、瑕疵の程度が重ければ告知するべき期間も長くなり、瑕疵の程度が軽ければ告知すべき期間は短くなる傾向があるという程度のことしか言えません。
実際の裁判例では、50年以上前の事故でも説明責任を判決で認めたケースもあります。
ただ、先ほどご紹介した判決例からも分かるように、多くの判例は10年程度は心理的瑕疵の説明責任を認めています。
急いで売る必要がないのであれば、ある程度時間が経過してから売却することをおすすめします。
更地にして売る
事故物件が戸建住宅の場合は、取り壊して更地にして売る方法もあります。
事故が建物で起きた場合、忌まわしい記憶は建物に付随しています。
ですから、建物を壊してなくしてしまうことで買主の精神的負担はかなり減ります。
また、事故が家の裏にあった倉庫で起こった場合などは、倉庫だけでも取り壊すことで精神的負担が減ることもあります。
戸建住宅に関しては、築25年以上を経過していると価値はほとんどありません。
通常の住宅であれば建物の価値はゼロと考え、土地の値段だけ取引できます。
しかし、事故物件の場合はマイナスの影響があるので、建物が残っていると更地価格以下の値段で売却されてしまうようなものなのです。
買取業者に売る
相当な値引きをしても売れない場合や、事件後数年経っても買い手が現れない場合などは、かなり割安にはなってしまいますが、買取業者に売却するという方法もあります。
買取業者は、普段から問題を抱えている物件の購入に慣れているので、事故物件程度の理由であれば難なく買い取ってくれます。
さらに、買取業者である不動産会社は、『瑕疵担保責任を2年以上負わなければならない』というルールがあるので、瑕疵担保責任を負うことにも慣れています。
物理的な瑕疵がある物件を購入する際、買取業者は修繕やリフォームをして売りに出しますが、心理的瑕疵は修繕の必要性がないので、買取業者にとってはむしろ割安な買い物なのです。
まとめ:事故物件でも売ることを諦めない!
事故物件は、残念ながら『売ることが難しい物件』です。
ただ、絶対に売れない物件でもありません。
先ほどご紹介した方法を駆使して売却を試みる価値はあります。
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事故物件は取り扱いが難しい物件なだけに、売却をする際は、『どの不動産会社にお願いするか?』で結果が大きく変わってきます。
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