「せっかくマイホームを購入したのに、その直後に転勤の辞令が出た!」という話はよく聞きます。
ただ、転勤の場合、いくつかのパターンがあり、どのパターンに該当するかで、持ち家の活用方法もある程度決まってきます。
そこで今回は、マイホーム購入後、転勤が決まった場合の持ち家の活用方法について、「売却or賃貸or空き家」の3パターンに分けて解説していきたいと思います。
転勤決定!持ち家は売却or貸すor空き家のどれがおすすめ?
転勤の辞令が出て、家族全員で転勤先に移住する際に持ち家をどうするか悩んだ場合は、まず、次の3つのパターンのうちどれに該当するか考えてみて下さい。
- 戻るかどうか不明&持ち家がある地域は賃貸需要が少ない
- ほぼ確実に3年以内に戻る&賃貸需要が多い地域に持ち家がある
- 確実に1年以内に戻ってくる
上記のいずれかに該当するなら、おすすめの方法はそれぞれ次のようになります。
- 売却
- 賃貸
- そのまま空き家
また、転勤になった場合に考えるべきポイントは次の2つです。
- 自分がまたその家を活用する可能性があるか?
- 需要があるか?
戻るかどうか不明&持ち家がある地域の賃貸需要が少ない場合
戻る可能性が極めて低いなら、『売却する』のが最善の方法だと言えます。
なぜなら、家は所有しているだけで「固定資産税」や「都市計画税」が発生します。
さらに、マイホームを購入する際に住宅ローンを組んでいると、ローンの返済をする必要があります。
もし、売りたくないということであれば、これらの費用を負担できるだけの経済的な余裕があるかを十分に検討しましょう。
ほぼ確実に3年以内に戻る&賃貸需要が多い地域に持ち家がある場合
確実に3年以内に戻ってくる予定がある場合は『賃貸』を検討しましょう。
ただし、借りる人がいなければ成り立たないので、賃貸需要が多い地域に限られます。
そのため、相場より安い賃料にするなどの工夫が必要でしょう。
また、期限付きで賃貸にする場合、注意すべき点が2つあります。
- 「定期借家契約」で貸す
- 住宅ローンを利用している場合は金融機関に相談しておく
「定期借家契約」で貸す
賃貸契約には「定期借家契約」の他に「普通借家契約」というものもありますが、後者にすると、貸主は「正当な事由」がない限り解約ができません。
そして、「オーナーが転勤から戻ってくるから、再び住みたい」というのは「正当な事由」として認められません。
これに対して、「定期借家契約」で貸し出していると、契約の更新がないので、契約が終了すると必ず退去してもらえます。
定期借家契約の場合、契約期間は貸主と借主双方の合意で決めることができるので、3年でなく、5年、10年など契約期間を設定することができます。
また、契約期間内の途中解約は基本的にできませんが、貸主・借主の合意のもと、再契約(更新)することは可能です。
住宅ローンを利用している場合は金融機関に相談しておく
住宅ローンは、借りている人が自分で住む目的で購入した家に対して融資することを前提にすることで、一般の借入よりも低い金利が設定されています。
そのため、住宅ローンの債務者が勝手に家を賃貸に出してしまうと、金融機関との契約違反となり、ローンの種類が変更になって、金利が上がる可能性があります。
ただ、転勤の間だけの賃貸であれば住宅ローンのままでも認められることが多いので、あらかじめ金融機関に相談して、了承を得ておきましょう。
確実に1年以内に戻ってくる
確実に1年以内に戻るのであれば、売却する人は少ないでしょう。
ただ、「賃貸」にするのは難しいのが現状です。
仮に借り主が見つかっても長くは住めないので、家賃をかなり安くしないといけないでしょう。
また、賃貸にするにあたり、リフォームやクリーニングの費用がかかる場合もあります。
そのため、転勤になっても1年以内に戻る可能性が高いのであれば、『そのまま空き家にする』のが得策です。
転勤の際に持ち家を売却するメリット・デメリット
転勤が決まった際に持ち家を売る場合、どのようなメリット・デメリットがあるか見てきましょう。
持ち家を売却するメリット
転勤が決まった際に家を売る場合に考えられるメリットには、主に次のようなものがあります。
- 住み替えが可能になる
- 賃貸ほど手間がかからない
- 資金的余裕が生まれる
もし、今の持ち家を売らずに、ローンを組んで転勤先で新しい住宅を購入する場合、旧宅の住宅ローンと新しい家の住宅ローンを2重で組むことになります。
そのため、かなりの経済力が必要になります。
ですが、持ち家を売るとなると、売却益をもとに移転先でマイホームを購入することも可能になり、選択肢が広がります。
また、賃貸に出す場合、不動産会社に管理を委託したり、家賃収入について確定申告をしなければなりません。
さらに、家を売ると固定資産税や都市計画税、火災保険料などの維持費が不要になります。
家を売ると、住宅ローンの負担がなくなり、維持費もかからず、住宅ローンの残債より高く売ることができれば、まとまった資金を手にすることもでき、資金的余裕が生まれると言えるでしょう。
持ち家を売るデメリット
持ち家を売る際の唯一のデメリットは、『思い入れのある家を手放す』ということです。
ただ、理想の住まいは家族の状況によって変化します。
そう考えて、前向きに売却を検討できるかがポイントになります。
転勤で住宅ローンが残っている家を売却する時の注意点
転勤が決まり、家を売る場合、住宅ローンを完済しないと家を売ることはできません。
というのも、住宅ローンを組む際に、融資をする金融機関が家に『抵当権』を設定しているからです。
抵当権が設定されている家を買うと、万が一、売主がローンの返済を滞納した場合、家が競売にかけられてしまい、買主はせっかく購入した家を失うことになります。
持ち家に住宅ローンが残っている場合に売却する方法
抵当権を抹消するには、住宅ローンを完済する必要があります。
家を売った売却益で住宅ローンが完済できればいいですが、足りない場合は、貯金などで不足分を返済することになります。
もし、売却益や貯金で住宅ローンが完済できない場合は、「住み替えローン」や「無担保ローン」を利用することになります。
住み替えローンはほとんどの銀行にあるサービスなので、現在、住宅ローンを借りている銀行に相談してみましょう。
また、新しく家を買う予定がないのなら、住宅ローンの残債を無担保ローンに借り換えることになります。
無担保ローンの金利は住宅ローンに比べてかなり高いです。
ローンの総額は少なくなるので返済金額は抑えられますが、売却益で住宅ローンを完済してしまうのが理想的です。
転勤の際に持ち家を賃貸にするメリット・デメリット
先ほどご紹介した「定期借家契約」にすれば、契約期間が終わると確実に家に住むことができます。
そのため、転勤になっても戻ってくる可能性が高いなら、定期借家契約で賃貸に出すのもありです。
ここでは、持ち家を定期借家契約で賃貸に出した場合のメリット・デメリットを紹介します。
持ち家を賃貸にするメリット
賃貸のメリットは、入居者が見つかれば家賃収入が得られるので、そのお金を『住宅ローンの返済に充てられる』ことです。
住宅ローンがない場合、家賃収入はそのまま副収入になるので、それだけ経済的な余裕も生まれるでしょう。
持ち家を賃貸にするデメリット
持ち家を賃貸にするデメリットには主に次ようなことが考えられます。
- 転勤から予想より早く戻ることになっても持ち家に住めない
- 入居者とトラブルになることもある
- 空室になると支出だけが増える
定期借家契約は、契約期間内の途中解約ができません。
ですから、5年で契約した場合、転勤から3年で戻ることになっても、持ち家に住むことができません。
また、入居者とトラブルになる可能性もあります。
さらに、入居者が見つからないと、「住宅ローンの返済」「家の管理費・修繕積立・固定資産税」など、支出だけが発生することになります。
マイホームは賃貸用に建てられた物件ではないので、諸経費を差し引くと赤字になるということがよくあります。
なお、賃貸に出す際や入居者の入れ替え時のリフォーム費用、故障が発生した場合の修繕費用はオーナー負担になります。
こういったデメリットにより、資金的な余裕がなくなる可能性があるということもしっかりと頭に入れておきましょう。
転勤で持ち家を貸したい場合はリロケーションも検討しよう
家を貸す場合、不動産会社に仲介を依頼して、借主を探してもらう方法以外に、『リロケーション』というサービスを活用する方法もあります。
リロケーションとは、転勤などの理由で一時的に家を空けるときに、その期間家を貸し出すことです。
ここでは、リロケーションについて解説していきます。
転勤中の持ち家の管理業務の手間を省きたいならリロケーション!
リロケーションでは、業者に委託し、遠隔地にいるオーナーに変わって持ち家の管理をしてもらいます。
管理委託にとどまらず、「入居者募集」「賃貸借契約代行」「家賃督促」「クレーム処理」「敷金返還」など、賃貸に関する一切の業務を請け負ってくれます。
リロケーションの際に発生する費用には次のようなものがあります。
- 管理委託申し込み料
- 契約事務手数料
- 広告用写真の撮影料
- ハウスクリーニング・壁紙の張り替え
- 入居者決定の成約料
- 管理委託手数料(必要時)
- 修繕費用(発生時)
- 定期巡回管理料(発生時)
- 納税代行料(発生時)
- 管理会社の契約更新料(毎年発生)
- 退去立会い費用(管理費に含まれることもある)
- (自分でまた住む際の)ハウスクリーニングなどの費用(必要時)
定期借家契約を締結して賃貸する際に、「管理業務を業者に委託する場合はリロケーションとなる」と考えておいていいでしょう。
転勤する際に空き家にするメリット・デメリット
続いて、転勤中に持ち家を空き家として所有するメリット・デメリットについて解説します。
持ち家を空き家にするメリット
空き家のメリットは次の2つが挙げられます。
- 他人に貸さないので安心
- 好きな時に戻れる
空き家のメリットについては、特に説明をしなくてもご理解いただけるのではないかと思います。
続いて、空き家のデメリットについてご紹介します。
持ち家を空き家にするデメリット
- 家が傷んだり、不審者に狙われる
- ローンと家賃を負担しなければならない
人が住んでいない家は傷むのが早いので、数ヵ月に一度は空気の入れ替えを行うのが理想的です。
さらに、旧住宅に残っている住宅ローンの返済と、転勤先の新住居の住居費用を同時に負担しなければなりません。
転勤の際に空き家にした場合のライフラインはどうする?
そこで、最後に、空き家のライフラインの利用を停止・継続する時の注意点をそれぞれご紹介します。
ここでは、「水道」「電気」「ガス」についてみていきます。
水道
水道を止めると、家の見回りに来た時に「トイレが使えない」「掃除用の水がない」といった不都合が生じます。
地域によっては、一時的に水道を使えるような手続きもありますが、その場合は、1日だけ利用しても1ヶ月分の基本料金がかかるケースもあるので注意が必要です。
また、長期間水道を止めてしまうと、配管が錆びたり悪臭が発生する可能性もあります。
一方、空き家でも水道を止めない場合は、定期的な料金がかかるほかに、侵入者によって不法に水道が使われる可能性があります。
電気
電気の場合は、漏電や放電による火災の危険性があるので、管理には細心の注意を払いましょう。
また、地域によっては、空き家の管理における注意事項に「空き家になった場合、ガス・電気は確実に遮断する」と記載されていることもあります。
電気を停止する際の注意点としては、『浄化槽』と『給湯器』の問題があります。
浄化槽を使っている場合は、電気を止めてしまうとバクテリアが死滅して悪臭が発生し、給湯器を止めると、凍結が起こり故障の原因になります。
ガスを止めない場合は、アンペアを低い契約にすることで、通常の料金より費用を抑えることができます。
また、漏電・放電の危険性を考慮して、部屋に置くものには細心の注意を払いましょう。
ガス
ガスに関しては、安全性を優先して、空き家にするなら『早期に閉栓の手続きをする』ことをおすすめします。
また、ガスの場合は、通常1日からガスの一時利用が可能で、費用も日割りの基本料金+使用料金の支払いで済みます。
また、ライフラインを停止するか継続するかは、誰が空き家を定期点検するかによって変わってきます。
例えば、空き家管理サービスを利用する場合、ガスは閉栓しますが、清掃やセキュリティシステムを利用する関係で、電気・水道の契約が必要になるケースもあります。
まとめ:転勤後の計画に合わせて家を有効活用しよう
家を購入してすぐに転勤が決まると、家の活用法について悩んでしまいますが、判断基準はご紹介した通り、次の3つを考慮するといいでしょう。
- 戻るかどうか不明&持ち家がある地域は賃貸需要が少ない
- ほぼ確実に3年以内に戻る&賃貸需要が多い地域に持ち家がある
- 確実に1年以内に戻ってくる
転勤が決まった時はメリット・デメリットを考慮して家の活用法を考えよう
言うまでもなく、あなたにとって一番メリットが大きい方法を選択するのがベストです。
ただ、持ち家に未練がないのなら、「資金的負担が少なくなる」「選択肢が広がる」「精神的にも物理的にも自由になれる」という意味で、『売却』を個人的にはおすすめします。
なお、家を売る際の流れに関しては、「【初心者必見】家を売る流れは全9ステップ!各ステップごとに徹底解説」で詳しく解説しているので、ご参照ください。